ペルシャ絨毯はイランで作られてきた手織り絨毯で、床敷きだけでなく壁掛けやテーブルクロスにも用いられ、その緻密な文様と高い品質によって世界に知られています。起源は紀元前まで遡り、2500年の歴史の中でデザインや技法は各時代の文化的背景を映しながら変化・発展してきました。
紀元前5世紀(2500年前)に織られたパジリク絨毯は現存最古の手織り絨毯で、高密度の織りにより精緻な動物文様が表現されています。アケメネス朝(紀元前6〜4世紀)の宮殿には豪華な絨毯が敷かれ、アレクサンドロス大王もその美しさに驚嘆したと伝えられています。ササン朝(3〜7世紀)のホスロー1世は長さ140メートルの豪華な『春の絨毯』を織らせました。
16〜17世紀のサファヴィー朝はペルシャ絨毯の黄金期で、シャー・タフマースプとシャー・アッバース1世のもと多数の名品が生み出されました。シャー・アッバース1世は都をイスファハンに遷し宮廷工房を保護して絨毯制作を奨励し、金銀糸を用いた豪奢な絨毯も生み出されました。この時期に花模様や中央にメダリオンを配した優美なデザインが完成し、後世の手本となりました。
カージャール朝(19世紀)で絨毯産業が復興し、19世紀後半にはヨーロッパでのペルシャ絨毯ブームによって生産が飛躍的に拡大しました。その後のパフラヴィー朝(1925〜1979年)でも王室が伝統文様の継承と品質向上を奨励し、レザー・シャーは国営絨毯会社を設立して製作と輸出を管理しました。
1979年の革命後も絨毯の生産は途切れず、現代でもイランは世界最大の絨毯生産国として世界市場の約3割を占めます。近年は機械織り品や他国製の安価な模倣品との競争が激しいものの、長い伝統に裏打ちされた芸術性と品質によって依然高い評価を受けています。