カシュガイとは、イラン南西部に暮らす遊牧民「カシュガイ族」が伝統的に手織りしてきたペルシャ絨毯の一種です。
カシュガイ族のラグは、大胆な幾何学模様を特徴とし、中央に菱形やメダリオン(※絨毯中央の円形や多角形の意匠)が配されるデザインが一般的です。羊や鳥などの動物や植物のモチーフが織り込まれ、遊牧民の暮らしが反映されています。
配色は、深みのある赤を基調とし、黄色や緑、紺、アイボリーなども用いられます。染色には地元の植物を用いた天然染料が使われ、一枚の絨毯に使われる色数は通常6〜7色に限られます。都市部で織られる精緻な対称模様の絨毯とは異なり、素朴で自由な図案が多い点も、トライバルラグならではの魅力です。
素材には上質なウール(羊毛)が用いられます。糸は部族が飼育する羊やヤギから採取した毛を手で紡いで作られ、伝統的に草木染めで温かみのある色合いに仕上げられます。手織りによる結び目は比較的粗く、厚みのあるしっかりとした織地になるため、耐久性が高く、日常使いにも適しています。
このカシュガイ族のラグの中でも、とくに毛足が長く厚みのあるものは「ギャッベ」と呼ばれます。ギャッベ(Gabbeh)はペルシャ語で「粗い」「ざっくりした」を意味し、その名のとおり、素朴で簡素なデザインが特徴です。ギャッベはもともと遊牧民がテントの床に敷いたり、寝具として使ったりしていたもので、ふかふかとした心地よい手触りがあります。