目次
ペルシャ絨毯の歴史
古代
絨毯を織る技術は古代ペルシャの時代から存在していました。考古学的な証拠によれば、紀元前500年頃のペルシャのお墓から絨毯の断片が発見されました。また、シベリアのスキタイの墓で発見された「パジリク絨毯」は、世界で最も古い現存する絨毯とされています。
イスラム黄金時代
イスラムの到来とともに、ペルシャ地域の芸術活動が繁栄し始めました。イスラム黄金時代には、モスクやエリートの家で使用される美しい絨毯の生産が増加しました。
サファヴィー朝
16世紀から18世紀にかけてのサファヴィー朝の時代は、ペルシャ絨毯製作の黄金時代と言われています。サファヴィー朝の君主の1人、シャー・アッバースは、絨毯織りの技術を大いに推進しました。アルダビル絨毯など、最も有名なペルシャ絨毯の多くは、この時代に製作されました。サファヴィー朝時代には、タブリーズやカシャーン、イスファハーンなどの都市に王立の工場やワークショップが設立されました。
19世紀 - 20世紀
19世紀に入ると、西洋諸国との交易が増加し、ペルシャ絨毯は国際的に高く評価されるようになりました。しかし、20世紀に入り機械製の絨毯の普及が増加し、伝統的な手織りの絨毯の価値が低下する傾向が見られました。
現代
現在、ペルシャ絨毯はその美しさと品質の良さから世界各地で高く評価されています。イラン政府や各地の組織は、この伝統的な手工芸を守り、次世代に伝えるための取り組みを続けています。
ペルシャ絨毯の種類
タブリーズ絨毯
イランの歴史的なカーペット生産地であるタブリーズは、テヘランから西へ600kmに位置し、イラン最大の都市の一つとして知られています。この地域では、シンプルな絨毯から豪華なものまで、幅広い種類が生産されており、特にペルシャ絨毯として世界的に有名です。
タブリーズ絨毯の特徴
タブリーズ絨毯は、イラン北西部、東アゼルバイジャン州の州都であるタブリーズ市に起源を持ちます。これらの絨毯では、「ラージ」という独特の単位でノット密度を測定することでその強度を示しています。糸の材料としては綿や絹がよく使用される。デザインにはメダリオン、ヘラティ/マヒ、フィギュラル、ピクトリアル、3D形状のラグなど、多岐にわたる種類があります。特にアンティークのタブリーズ絨毯は非常に価値が高い。現代の主要な生産者としては、アラバフ、ガリバフィ・ナッサジ・タブリーズ、ミリ兄弟などが挙げられます。製造技術としては、トルコ(対称)結び目の技術が一般的です。
カシャン絨毯
イランの歴史的な都市、カシャーンはイスファハーンとテヘランの中間地点に位置し、砂漠に囲まれた美しい場所です。この都市は、特に高品質な羊毛を使用した絨毯で有名です。ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館に展示されているアルデビル絨毯のような名作は、カシャーンで作られたと言われています。
カシャン絨毯の特徴
繊細な花柄のフィールド上に配置されたメダリオンと角のパターンが特徴的です。色彩は深い青色、豊かな赤色、そして象牙色の組み合わせが主流で、ノット数は100kpsiから800kpsi以上にも及びます。
イスファハン絨毯
イランのユネスコ世界遺産都市、イスファハーンは、見事な建築と豊かな文化遺産で世界的に知られています。この都市の美しい建築に影響を受けた絨毯は、繊細な花やアラベスクの模様が織られています。
イスファハン絨毯の特徴
鮮やかな色合い、特に深い赤と青の組み合わせが一般的です。自然素材から作られる染料を使用するため、色は非常に鮮やかであり、さらに長持ちするのが特徴です。
クム絨毯
イランのテヘランから約100km南に位置する都市、クムは、シルク製のペルシャ絨毯の産地として世界的に有名です。見る人を虜にする美しい艶と輝きはクム産シルク絨毯の特徴です。
ナイン絨毯
イラン中心部のナインは、イスファハーンから東へ約200キロの位置にあり、西側の大砂漠Dasht-e-Kavirの端に位置する歴史的な町です。この地域の特有の粘土の建物や10世紀の遺物を持つモスクは、イランの歴史的遺産の一部として知られています。
ナイン絨毯の特徴
アイボリーやベージュを基調としたエレガントなデザインに、白いシルクを模様の一部に使用しています。また、中央のメダリオンから細かな唐草模様が広がるデザインが特徴です。
ケルマン絨毯
イラン南東部の歴史的な都市、ケルマンは、古代の建築や遺跡で知られる文化の宝庫です。この都市は、イランの中央砂漠地域に位置し、夏季の厳しい暑さが特徴的な乾燥した気候を持っています。
ケルマン絨毯の特徴
ケルマンは、独特のデザインと柔らかいパステルカラーの配色で知られる絨毯の産地として、世界中の絨毯愛好家に評価されています。特に「ラヴァール(Lavar)」デザインは、風景や繊細な花柄が美しく表現されたものとして、ケルマン絨毯の中でも高く評価されています。古典的なヴァーゼデザインも、ケルマン絨毯の象徴として広く知られており、ヴァーゼや花のモチーフが連続して織り込まれることで、絨毯全体に独特のリズムを生み出しています。
ビジャールの絨毯
ビジャール町で生産され、その耐久性で知られています。通常、密度が高くコンパクトな織りを持ち、非常に頑丈です。デザインは、典型的には幾何学的で、ヘラティ(一種の魚のモチーフ)です。
ハマダンの絨毯
ハマダンはイラン西部の歴史的な都市で、首都テヘランから約300キロ西に位置しています。魚の形をしたヘラティ模様や、青と赤の主要な色調が特徴です。この地域には多くの村々があり、それぞれが独自のデザインと幾何学的なパターンを持つ絨毯を生産しています。
サルークの絨毯
サルークはイランの北西部に位置する地域で、冬季は寒さが厳しく、雪が降ることもあります。この厳しい気候のため、この地域の羊は柔らかく脂分が豊富な高品質の羊毛を持っています。この羊毛は絨毯作りに非常に適しており、その結果としてサルーク地域で作られる絨毯は肌触りが良く、丈夫で高品質となっています。サルーク以外にも、近隣のギアサバドやアラクの東部、マハラトなどのアラク地域の村々で作られる絨毯も「サルーク絨毯」として知られています。
バルーチの絨毯
これは東イランのバルーチ部族によって作られる絨毯で、小さなサイズが多く、祈りの際に使用されることが一般的です。幾何学的なパターンと暗い色のパレットが特徴です。
ペルシャ絨毯のデザインとモチーフ
ペルシャ絨毯のデザインは多種多様で、唐草文様、アラベスク文様、忍冬文様、円形文様、幾何学文様などが一般的です。これらのモチーフはペルシャ絨毯の美しさと独特の魅力を形作っています。
ペルシャ絨毯の主要なデザイン:
ペルシャ絨毯のケアとメンテナンス
ペルシャ絨毯は適切なケアとメンテナンスを行うことで、その美しさを長く保つことができます。
ペルシャ絨毯のケアの基本
- 直射日光を避ける:絨毯の色が褪せる原因となります。
- 熱いお湯や大量の水、アルカリ性の洗剤での洗濯は避ける:絨毯の質感や色が損なわれる恐れがあります。
- 重たい家具の下には置かない:絨毯の形が崩れる可能性があります。
- 火や湿気の多い場所には保管しない:絨毯の耐久性が低下する恐れがあります。
専門のケアとメンテナンス
手織り絨毯は正しくケアすることで長く楽しむことができます。そのため、約5年から7年ごとに専門店でクリーニングを行うことがおすすめです。ペルシャ絨毯のケアに関して、家庭での手入れも可能ですが、専門的な知識や技術が必要な場合は、専門業者に相談することをおすすめします。SATHI RUGSでは、絨毯のクリーニングや修理も行っていますので、お気軽にご連絡ください。