キリムギャッベとは?立体感を生む織りの技法と魅力
平織りのキリムと毛足のあるギャッベがひとつになった手織り絨毯。
技法と文様の意味を専門店スタッフが解説します
1. キリムギャッベとは
毛足のあるギャッベと、薄く軽やかなキリム。異なる二つの織りを一枚の中で組み合わせた「キリムギャッベ」は、平面と立体が共存する表情豊かな手織り絨毯です。
見る角度や光の当たり方によって、模様が浮かび上がったり、色の濃淡が変化して見えたりするのが大きな魅力。生命の木、鳥、羊、花瓶、糸杉など、暮らしへの願いを託した文様も随所に織り込まれています。
SATHI RUGSで取り扱うキリムギャッベは、主にシーラーズ地方のカシュガイ族の織り手によるもの。ここでは、ギャッベとキリムの違い、複数の織りを組み合わせる技法、文様に込められた意味、日常のお手入れまでを詳しく解説します。
2. ギャッベとキリムの違い
ギャッベとキリムは、どちらもイランをはじめとする地域で受け継がれてきた手織りの敷物ですが、表面の構造が異なります。
| ギャッベ | キリム | キリムギャッベ | |
|---|---|---|---|
| 織りの構造 | 経糸に糸を結び、表面にパイル(毛足)をつくる | 経糸と緯糸を交差させる平織り | パイル織りと平織りを一枚に組み合わせる |
| 手触り・厚み | 厚みとクッション性がある | 薄く、比較的軽い | 凹凸がありながら軽やか |
| 見た目の特徴 | 模様がふっくらと立ち上がる | 輪郭が明快で、すっきり見える | 模様が立体的に浮かび上がる |
キリムギャッベでは、背景をキリムの平織りにし、木や花、動物、ボーダーなどをギャッベのパイル織りで表現することがあります。平らな部分と毛足のある部分の高低差によって、色だけでは表せない陰影が生まれます。
3. 立体感の鍵となる「スフ織り」
ギャッベとキリムを組み合わせる技法は「スフ織り」と呼ばれます。
キリム部分では経糸と緯糸が平らな面をつくり、ギャッベ部分では糸が上向きに立って毛足になります。たとえば、平織りの地にパイル織りの生命の木を置けば、幹や枝が背景から浮き上がり、まるで絵に触れられるような奥行きが生まれます。
全体をパイルで覆うギャッベより軽いものも多く、床に敷くだけでなく、壁に掛けてタペストリーのように楽しめるのも特徴です。
4. ジジム織りが生む、刺しゅうのような表情
ジジム織りは、平織りの地をつくりながら、文様用の緯糸を加えて柄を描く技法です。表面では模様がわずかに浮き、裏面では色糸が刺しゅうのように渡って見えます。
一見すると完成したキリムの上から刺しゅうを施したように見えますが、模様は地組織とともに織り込まれています。平織りだけでは出しにくい細かな輪郭や立体感をつくれる一方、手間と技術を要します。
キリムギャッベにジジム織りが加わると、表面には次の三つの高さが生まれます。
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毛足が立つギャッベのパイル部分
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平らで軽やかなキリムの地
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緯糸の重なりでわずかに浮くジジムの文様
同じ色でも織り方が違えば光の受け方が変わるため、単なる色柄以上の奥行きを楽しめます。
5. 文様は、暮らしへの願いを伝える言葉
手織り絨毯の文様は、単なる装飾ではありません。織り手が身近な自然や動物を抽象化し、家族の健康、暮らしの安定、豊かさ、外からの災いを遠ざける願いなどを託してきました。
| 文様 | 一般的に重ねられる意味 |
|---|---|
| 生命の木・糸杉 | 生命力、健康、長寿、成長 |
| 鳥 | よい知らせ、幸せ、自由 |
| 羊 | 財産、豊かさ、繁栄 |
| 花瓶と花 | 発展、繁栄、実り |
| 三角形・狼の足跡 | 魔除け、守護 |
| クジャク | 災いを遠ざける守護的な存在 |
同じ文様でも、地域、部族、織り手、組み合わせによって解釈は異なります。意味を一つに固定するより、配色や構図、ほかの文様との関係から、一枚に込められた物語を読み取るのが自然です。
6. 選ぶときに確認したい3つのポイント
1. 使う場所とサイズ
設置する場所の幅と奥行きを測り、扉の開閉や家具との距離を確認します。壁に掛ける場合は、作品の重さに加え、周囲に十分な余白が取れるかも確かめておくと安心です。約40cm角前後の小さな一枚なら、椅子やソファ、車のシートに敷く座布団としても活躍します。
2. 毛足と平織りの割合
パイル部分が多いほど、ふっくらとした存在感が強くなります。平織り部分が多いほど、軽やかで輪郭のはっきりした印象になります。床で踏み心地を楽しむのか、壁で絵柄を眺めるのかによって、適したバランスは変わります。
3. 方向性の有無
一本の木や花瓶を中心にした作品は、上下の方向が明確です。中央メダリオンやオールオーバー柄は、置く向きを変えても見え方が安定しやすい傾向があります。部屋の動線や、どの方向から眺めることが多いかを考えると選びやすくなります。
7. キリムギャッベのお手入れ方法
日常のお手入れは、表面のほこりや細かなごみを掃除機で吸い取るのが基本です。織り目の方向に沿って、表面を傷めない強さでゆっくりとかけます。回転ブラシが強く当たる機種では、ブラシを止めるか吸引力を調整します。
飲み物などをこぼした場合は、乾いた布で水分を吸い取った後、固く絞った布で早めに拭き取ります。強くこすると汚れを広げたり、毛足や色に影響したりすることがあるため、外側から内側へ押さえるように処置するのが安全です。
強い洗剤、漂白剤、熱湯の使用は避け、十分に乾かします。素材、染料、織り方によって適切な方法が異なるため、広範囲の汚れや落ちにくい染みは、手織り絨毯を扱う専門のクリーニングに任せます。
8. まとめ ― 平面と立体、技法と物語が一枚に重なる
キリムギャッベの魅力は、二種類の敷物を単に組み合わせたことではありません。平織りの静かな面、パイルの柔らかな隆起、ジジム織りがつくる細かな陰影が、一枚の中で互いを引き立てています。
さらに、生命の木、鳥、羊、花瓶、糸杉、魔除けの幾何学文様が、健康、長寿、繁栄、守護への願いを伝えます。床に敷けば触感のある絨毯として、壁に掛ければ織りの絵画として楽しめる、実用品と芸術性をあわせ持つ手仕事です。
SATHI RUGSでは、シーラーズ産のキリムギャッベをはじめ、ギャッベやキリムを一点ずつ選んで取り揃えています。
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