ギャッベとは、イラン南西部ファールス州周辺に暮らす遊牧民が織り上げる毛足の長いのウール絨毯を指します。
主にカシュガイ族やルリ族といった部族が手がけており、もともとは家族の生活に用いる敷物として発達しました。
「ギャッベ」という言葉はペルシャ語で「粗い」「素朴」という意味を持ち、その名の通り力強さと温もりが魅力です。
特徴(素材・織り・模様)
ギャッベは上質な羊毛を用い、油分を含むため弾力性と耐久性に優れます。
織りは一目一目の手織り(ハンドノット)で行われ、結び目密度は比較的低く、厚みと柔らかさを備えています。
染色には天然の草木染めが用いられることが多く、時間の経過とともに色が深まり風合いが増します。
模様は「生命の木」や「鹿」「家」など、家族の繁栄や幸せを願うシンボルが多く登場します。
(→詳しくはギャッベ模様の意味をご覧ください。)
歴史
ギャッベの始まりは、遊牧民が厳しい自然環境の中で防寒や寝具として織った生活必需品でした。
部族の女性が家族のために織り継ぐ中で、独自の文様や色彩感覚が受け継がれていきました。
20世紀後半になると、その素朴で温かみのあるデザインが芸術的価値として評価され、世界市場に広がりました。
特に1990年代以降、日本やヨーロッパで人気が高まり、インテリアとして定着しました。
(→詳細はギャッベの歴史解説をどうぞ。)
種類と分類方法
ギャッベは大きく以下の方法で分類されます。
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産地別:シーラーズやザグロス山脈周辺などで特徴が異なります。
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等級別:カシュクリのような高密度タイプから伝統的な粗めタイプまで幅広いです。
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サイズ別:座布団サイズからラグ、ランナー、大型サイズまで展開されています。
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染色別:草木染めと化学染料で仕上げに違いが出ます。
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模様別:動物、植物、幾何学模様など、意味や意匠によって選ぶ楽しみがあります。
(→購入時のポイントはギャッベの選び方をご覧ください。)
現代の人気動向
現在のギャッベは、北欧家具や和モダンにも合わせやすいインテリアアイテムとして注目されています。
サステナブル志向の高まりの中で、天然素材と手仕事による一点物の価値が見直されています。
価格はサイズや織りの密度、染色方法によって幅がありますが、長く使うほど味わいが増すのも魅力です。
模様や色の意味を知って選ぶと、インテリアに物語性が加わり、より愛着を持って使うことができます。