「トライバルラグ」とは、部族が織る絨毯のことを指します。
「トライバルラグ」は英語で「Tribal rug」と書きます。「tribal」は部族という意味です。
トライバルラグは中央アジアと中東で何千年も前から織られています。多くのトライバルラグは、イラン、パキスタン、アフガニスタン、トルコ、などにに住んでいる部族によって手織りされています。
部族によって文様や色使いの特徴が異なります。それぞれ絨毯の名前の由来は、部族の名前や産地から来ています。
バルーチ
バルーチ絨毯は、バルーチ族によって作られます。
特に、パキスタンのバローチスターン州と、アフガニスタンとの国境近くの村でこれらの絨毯が織られています。
赤、茶色、青の色合いで、幾何学的な模様や伝統的なモチーフを取り入れたエスニックなデザインが特徴です。
パイルは通常ウールで作られ、豪華さを増すためにシルクが加えられることもあります。
バルーチスタン州(赤色) 地図引用元:Google社「Google マップ、Google Earth」
ギャッベ
イランのザグロス山脈(クルディスタン、ルリスタン、および南西部のファールスなどの地域)に住む遊牧民が織り始めた絨毯です。
彼らは寒い地域を移動するため、毛足のある厚みのある絨毯を作り始めました。図案は用意せずに、フリースタイルで自由に織っていました。織り手は、自分たちの生活に身近な動物や願いを可愛らしい模様にして織り込んでいました。
ギャッベはペルシャ語で「未加工」を意味し、ギャッベ絨毯の素朴さを表現しています。
ザクロス山脈(赤色) クルディスターン、ロレスターン、ファールス (青色)
地図引用元:Google社「Google マップ、Google Earth」
トルクメン
トルクメンの絨毯は、トルクメニスタンの民族、トルクメン族によって織られたものです。テントの敷物、ドア掛け、様々な大きさのバッグなど、多様な用途に使われています。
トルクメンの絨毯は、赤や茶色の強い色調で描かれた八角形のギュルのモチーフと幾何学模様が特徴です。基本的な八角形のギュルのモチーフは、織り手によって配色やデザインが様々です。トルクメンの絨毯の初期のものはシングルノット織りでしたが、後期のものはダブルノット織りになっています。
トルクメンの伝統的な絨毯製作技術は2019年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。
バフティヤーリー
イスファハン市近郊のサグロス山脈の、チャハール=マハール・バフティヤーリーに住むバフティヤーリー族にちなんで名付けられた絨毯です。バフティヤーリー絨毯は丈夫で頑丈なウール製絨毯です。ペルシャ絨毯の中でも最も丈夫なもののひとつで、太いウールで編まれているため、劣化が少ないです。
バフティヤーリ(赤色) 地図引用元:Google社「Google マップ、Google Earth」
ブハラ
ブハラ・ラグはウズベキスタンのブハラ市で生まれた手織り絨毯です。
八角形のモチーフは象の足とも呼ばれています。ブハラのオリジナルデザインは、トルクメニスタンの主要な部族の一つであるテケ族の絨毯の影響を受けています。そのため、ブハラ絨毯とトルクメン絨毯の間には類似点があり、特に「ギュル」モチーフの使用や、深みのある赤色が好まれています。
ペルシャ絨毯やパキスタン絨毯、アフガニスタン絨毯など、都市が絨毯にその名を宿しているのとは異なり、ブハラは元々生産が集中する中心地ではありませんでした。しかし、アフガニスタン、トルクメニスタン、タジキスタンとの国境に近いという好立地から、ブハラはこの地域で重要な商業都市としての地位を確立しました。その後、絨毯はすぐに西洋に伝わり、西洋の家庭や公共の場を飾るようになりました。
ブハラ(赤色のピン) 地図引用元:Google社「Google マップ、Google Earth」
マシュワニ
マシュワニは、主にパキスタンとアフガニスタンの各地に定住する部族です。
マシュワニ・ラグは、どんなインテリアにもピッタリの絨毯です。幾何学的な形と線で埋め尽くされたデザインパターンが特徴です。マシュワニ絨毯のデザインには空白がほとんどありません。
パイル織りと平織りのカーペットが組み合わされているため、凹凸と立体感が特徴です。デザインは幾何学的で、菱形のモチーフが絨毯全体に広がっています。
マシュワニ絨毯の歴史は何世紀にも遡ります。もともとは部族の結婚式の持参品として織られたものでした。